
不整脈
不整脈
不整脈とは、心臓の正常なリズムが乱れる状態を指します。通常、心臓は一定のリズムで拍動しますが、不整脈が発生すると、心拍数が速くなったり遅くなったり、あるいは不規則になることがあります。不整脈は一時的なものから慢性的なものまで様々で、その原因や重症度によって異なります。
主に左心房の異常電位により脈が不整(ランダム)になります。初期は心拍数120~160回/分程度と早い、発作的に始まり発作的に終わる、「発作性心房細動」から始まります。これが進展すると、7日以内まで続くようになると「持続性心房細動」、電気ショックをしても直らない「永続性心房細動」となります。永続性心房細動が長い期間続くと、今度は逆に心拍数が減少し、ペースメーカーが必要になることがあります。また、心房細動が止まるときに、一過性に心停止を来して失神することがあります(洞停止)。
心房細動の合併症として心不全と脳梗塞があります。左心房壁が痙攣することで、その左心房内の血液の鬱滞を生じて、血栓を生じ、それが脳に飛んで血管を閉塞させるのです。心房細動にはCHADS2スコアというものがあります。C(心不全)、H(高血圧)、A(75歳以上の高齢)、D(糖尿病)、S(脳梗塞の既往)により脳梗塞発症のリスクを評価する方法です。C、H、A、Dがそれぞれ1点ずつ、Sがあれば2点とカウントし、合計6点です。概ね1点あたり1~2%の脳梗塞発症のリスクが増えるとイメージしていただけると結構です。
血栓予防には「抗凝固薬」を用います。具体的にはワーファリン、リクシアナ、エリキュース、プラザキサ、イグザレルトです。患者さんからは「もう血液さらさらの薬をのんでいるのになぜ必要なのか?」と聞かれることがあります。その場合、血液さらさらのお薬は「抗血小板薬」であることが多いです。「抗血小板薬」は心筋梗塞や動脈硬化による脳梗塞の治療・予防には有効ですが、心房細動による脳梗塞を予防することは出来ませんので注意が必要です。なお、心房粗動という兄弟のような不整脈もありますが、ここでは割愛します。
通常の心拍よりも少し早く割り込む形で発生する拍動です。心臓の上側から出る上室性(心房性)期外収縮と、下側から出る心室性期外収縮があります。良く健診の異常で来られる方がいますが、単発であれば殆どの場合問題ありません。Holter心電図を行い、1日のうち10%未満の期外収縮であればあまり害はありません。しかし、連発する場合は注意が必要です。これらの単発の期外収縮でも、心房細動や心室頻拍のトリガーとなりうるからです。動悸が気になる方は、血圧測定の際に心拍数も見るようにしましょう。
危険度の高い不整脈です。心拍数は140~180回/分と早く、規則正しい脈を示しますが、早く動きすぎるがために、心臓の中に血液を溜める時間もなく、空打ち状態となります。そのため血圧が維持できずショックとなります。心筋梗塞後で心臓に傷が付いている場合や、生まれつき起きやすい人もいます。AEDなどの電気ショックの適応です。
最も危険な不整脈です。心室頻拍から移行することもあります。こちらは心臓が完全に痙攣してしまっていて、有効な心拍はありません。即座に電気ショックを行わないと死亡します。
心拍数が50回/分以下のことを指すことが多いです。不整脈は無症状の場合もありますが、動悸、めまい、息切れ、失神などの症状が現れることもあります。診断には心電図(ECG)やホルター心電図などが用いられます。心臓の電気系統の異常で起き、電線が切れることで起きる房室ブロックなどがあります。電解質異常でも比較的良く見られ、特に高カリウム血症の状態は注意が必要です。カリウム値が6以上になると不整脈が起きやすくなるので、腎臓が悪い方やカリウムを上げる薬剤(ARBなど)を使用している人は特に注意が必要です。
これも早い不整脈で、140~160回/分くらい動きます。心室頻拍ほど重症ではありませんが、人によってはめまいや失神を来すこともあります。発作源がわかりやすいことも多く、カテーテルアブレーションの良い適応です。
これらの典型的な不整脈の各症状を検査・診察を行います。
致死的な不整脈の検出と治療、自覚症状の強い方には症状を和らげる治療を行います。
不整脈の原因は多岐にわたりますが、大きく分けると心臓の構造的な問題と生活習慣や環境要因に分類されます。
これらの要因が重なることで、不整脈のリスクはさらに高まります。特に生活習慣は見直すことでリスクを減らすことが可能です。
不整脈の診断には、いくつかの検査方法があります。これらの検査は、心臓の電気的活動を記録し、異常を特定するために用いられます。
心電図は、心臓の電気的な活動を測定する基本的な検査です。電極を胸や手足に取り付けて、心拍のリズムや速さを記録します。短時間の検査で不整脈を確認できることがありますが、持続的な不整脈を捉えるためには追加の検査が必要な場合があります。
ホルター心電図は、24時間から48時間にわたって心電図を連続的に記録するポータブル装置であり、日常生活を送りながら心臓のリズムを記録します。不整脈の発生頻度やタイミングを把握するのに役立ちます。
イベントレコーダーは、症状が現れたときに心電図を記録するための携帯型デバイスです。患者が症状を感じた際に装置を作動させることで、その瞬間の心電図を記録できます。
運動負荷試験は、運動中の心臓の反応を観察する検査です。トレッドミルやエルゴメーターを使って運動を行いながら心電図を記録し、運動が不整脈に与える影響を確認します。
心エコーは、超音波を用いて心臓の構造や機能を評価する検査です。心臓の形状や動き、血流の状態を詳細に確認できるため、不整脈の原因となる構造的な問題を特定するのに役立ちます。
EPSは、心臓内に電極カテーテルを挿入して心臓の電気的活動を詳細に調べる侵襲的な検査です。この検査は、特定の不整脈の原因や発生部位を正確に特定するために行われます。
これらの検査を組み合わせることで、不整脈の種類や原因を特定し、最適な治療法を選択するための情報を得ることができます。
不整脈の治療は、その種類や重症度、患者さんの全体的な健康状態に応じて異なります。以下に主な治療方法を紹介します。
画像の出典:トーアエイヨー「インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス」
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